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僭越ながら、と呟いてセバスチャンはシエルが選んだキャラクターを選択し、同じコースをチョイスする。そして、スタートの合図と同時に「 A 」と刻まれたボタンを押した。 ゲーム機から流れてくる音楽とブレーキの音で、セバスチャンはカーブに差し掛かったようだ。だが、当のセバスチャンはゲーム機を持ち、直立不動のままカーブを走り抜けていく。障害物を巧みに避け、ルーレット方式で手に入れた様々なアイテムを駆使し、加速や妨害を繰り返しながら、ファイナルラップを待たずに早々にトップに躍り出ると、そのまま他の追随を許すことなく堂々の一着でゴールする。 「如何でしたでしょうか?私も、坊ちゃんのように揺れておりましたか?」 グヌヌ、悔しそうに拳を握り締めるシエルに、セバスチャンは少しばかり唇を優越に歪ませた。 「悪魔な主の執事たるもの、これ位できなくてどうします?」 ハイスコアを記録したゲーム画面もそのままに返却されたゲーム機を受け取って、シエルは恨みがましい目でセバスチャンを見た。本当に、何でも飄々とこなすセバスチャンに、言いようもない怒りが湧き上がる。 「お前、何か裏技を知っているんだろう?」 どうせセバスチャンのことだ。このゲームをシエルに与える前に色々と調査し、裏技の一つや二つ見つけていない訳がない。 「坊ちゃん、それは買い被り過ぎでございますよ」 薄い笑みを貼り付けたセバスチャンに、シエルは頭を振った。嘘をつくな、という契約を結んではいるが、常に誠実であれ、とまでは言っていない。シエルは表情を消すと、緋い瞳でセバスチャンを見据えた。 「命令だ、セバスチャン。僕の目の前で、もう一度やってみろ」 シエルのその声音は絶対。契約ではなく、セバスチャンの美学によって束縛される、呪いにも等しい絶対命令。 「畏まりました」 セバスチャンは、再びシエルからゲーム機を受け取ると先程とまったく同じ選択をする。その時だ、シエルの声が再び響く。 「突っ立ったままだと見えないだろう」 机をコツコツと爪で叩いて、シエルは不満とばかりにセバスチャンを睨む。 「では、如何致しましょうか?」 「こっちに来い」 シエルはセバスチャンを呼ぶと椅子から降りた。意味も分からず、ゲーム機をぶら下げたままのセバスチャンを腹を押して、椅子に座らせる。 「いけません、坊ちゃんがお立ちになっているなんて」 立ち上がろうとするセバスチャンの肩を押さえて、シエルは表情のないままセバスチャンの膝の上に腰を降ろした。そして、ゲーム機を握るセバスチャンの手を取ると、自分の正面に据える。 「・・・・・坊ちゃん?」
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