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「これなら良く見える」 上目遣いで得意げに笑うシエルに、セバスチャンは密かに天を仰いだ。きっと、この幼い主は自分の行動の意味が分かっていないに違いない。永遠に成長しないシエル。永遠の小悪魔とはよく言った。 「何をしている。早くゲームを始めろ」 裏技を盗まんと息巻くシエルに、セバスチャンは深く息を吸い込んだ。シエルが自ら膝に乗ったからと言って、それだけで心を乱すとは自分もまだ青いと自嘲して、セバスチャンはゲームをスタートさせた。
結局、セバスチャンの記録は裏技などの賜物ではなく、シエル同様の真っ向勝負で作られた物であることが、証明された。 「きっと坊ちゃんのことですから、すぐに上達なさいますよ」 慰めというにはあまりにも不誠実な言葉に、シエルはセバスチャンの膝の上で思いっきり鼻を鳴らした。言われるまでもない。睡眠を必要としない身である。昼夜を問わず繰り返しゲームをしていれば、あっという間にセバスチャンの記録を塗り替えることが出来るに決まっている。シエルはセバスチャンの手からゲーム機を引っ手繰ると、練習あるのみと言わんばかりにゲームをスタートさせた。 猛然とゲーム機に向かう膝の上の主に、セバスチャンは小さな耳朶に唇を寄せた。 「あぁ、坊ちゃん。申し遅れましたが、ゲームは一日一時間までですよ」 「何だと!」 ゲーム途中だと言うのに、シエルは画面から顔を上げ、セバスチャンを仰ぎ見た。気が遠くなるような時間を持て余すシエルに向かって、何を言い出すのだろうか。そもそも、このゲーム機の購入目的はシエルの暇つぶしであった筈。にもかかわらず、たった一時間と定める理由は何だというのか。 「目が悪くなってしまいますからね」 ニッコリと音がしそうなセバスチャンの微笑みに、シエルは爆発した。 「時間の流れに取り残された体に、成長も劣化もあるものか!」 しかし、セバスチャンは怯まない。相変わらず殺意を抱かせるに充分な笑顔を貼り付け、更に素っ頓狂なセリフを吐き出した。 「ゲームのし過ぎは、お体に触りますから」 至近距離の拳銃で撃ち抜かれても死なない悪魔が、ゲームのし過ぎで床に臥せるなど何の冗談だろうか。シエルは反論の為に唇を開きかけて、ふと考える。どうせセバスチャンのことだ、シエルが口にしそうな言葉など全て想定しているに決まっている。ならば、とシエルは唇を歪めてセバスチャンを仰ぎ見る。 「じゃぁ、お前も一日一時間にするんだな」 酷い時は、宵の内から空が白み始めるまで、散々シエルを泣かしてくれるのだ。毎夜セバスチャンの欲望が満たされるまで挑まれては、幾ら死なない身体とは言え悲鳴を上げてしまう。 「おや・・・・・」 何を言い出すやら、とセバスチャンは目を丸くした。だが、すぐに目尻を下げ、シエルの腰を引き寄せると、濡れた唇でシエルの耳朶をなぞる。 「そんなこと仰って宜しいのですか?」 ゾクリと背中が粟立つ。 「長い夜、坊ちゃんがお一人で過ごされるなら、構いませんが?」 身体の奥に刻まれた甘い感覚が、シエルの理性を裏切る。指先が蕩けるほどの愛撫に慣れた身体が、シエルの意識を飲み込んでしまう。 「・・・・・・・うるさい・・・・・・」 悔しさを滲ませるシエルの声に、セバスチャンは淫靡な笑みを浮かべて白いこめかみに口付ける。 「仕方ありませんね。今日は特別ですよ?好きなだけ遊んでください」 お誕生日ですから、とセバスチャンは柔らかい笑みを浮かべると、優しくシエルを抱き寄せた。 「坊ちゃん、お誕生日おめでとうございます」
fin
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