| イライラする。 この訳の分からない感情を鎮めなくては、一晩中唸り続けることになりそうだ。 「アルト?どうしたんだ?」 上段で寝転んでいたミハエルが、心配そうに下段のベッドを覗き込む。不意に現れたミハエルに、アルトは声を上擦らせた。 「な、何でもねぇよ。・・・・・・ちょっと、トレーニングルームに行ってくる」 邪魔だ、とミハエルの顔を振り払うような仕草をしながら、アルトはロッカーに足を向けた。ゴソゴソとトレーニングウェアを取り出す背中を見ながら、ミハエルは首を捻る。 「トレーニングルームって、今何時だと思っているんだよ」 人によっては既に就寝しているだろうし、そうでなくても大抵の人間は就寝準備をしている時間である。そんな時簡にトレーニングなんて、狂気の沙汰だ。それに、とミハエルはため息を吐いた。そうでなくても、午後の授業は睡魔との闘いに全戦全敗中のアルトなのだ。夜中にトレーニングなんてしたら、明日の授業は全滅確実。それより、とミハエルは眼鏡のブリッジを押し上げる。 「明日、起きれなくなるぞ」 「ミシェルには関係ねぇだろ」 ミハエルの顔も見ずに言ってのけると、アルトはそのまま部屋を出た。シュンと閉まるドアを見ながら、ミハエルは肩を竦めた。 「関係ない、ねぇ。・・・・・起こすの、俺なんだけどね。眠り姫」
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ドスドスと床を踏み抜きそうな勢いで、アルトはランニングマシーンの前に立った。さすがに深夜に近い時間とあって、トレーニングルームには誰もいない。 自分の声は聞こえない。聞いてはいけない。 |