部屋の大掃除を済ませ、アルトが駅前に到着したのは集合時間の三分前だった。日曜日と言うことも手伝ってか、ミハエルが指定したアバウトな集合場所は凄まじい人混みでごった返していた。

「さすがに、まだ誰も来てないか・・・・・」

 携帯を片手に、アルトはキョロキョロと辺りを窺った。その時だ、視界の端で揺れる何かを捕らえた。

「アルト先パ〜イ!」

 ピョコンと弾んで、少しでもアルトの視界に納まろうとしているルカに、アルトは花のような笑みを浮かべて手を振り返す。

「よぉ、ルカ。ミシェルはまだか?」

「僕も先程着いたばかりなので・・・・・・・」

 グレーのダッフルコートを着て、財閥の子息らしく礼儀正しい挨拶をするルカに、アルトも釣られて頭を下げる。

「ま、ミシェルがいれば周りが放っておかないか」

 女性の人だかりがあれば、間違いなくその中心にいるのがミハエルだ。かつて、デートには少し遅れて行くのだ、と聞いたことがある。曰く、女性に囲まれている姿を女の子が見たら機嫌を損ねるから。勝手にほざいていろ、と切って捨てたが、アルトの心中が穏やかでなかったのは、言うまでもない。

「あっちの方、騒がしくないですか?」

 ルカが指差す方向を見れば、確かに人垣ができていた。しかし、人の隙間から見えるのはただのコインロッカーだ。荷物を預ける人で混み合っているだけではないのか。だが、アルトの予想に反して、人垣はそのままゆっくりアルトたちに近付いてくるではないか。

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