「朝風呂って、銭湯やってるのか?」 アルトの銭湯通いを、ミハエルは良く思っていなかった。不特定多数に、その白い肌を晒していると考えるだけで、眩暈さえ覚える。もっと本音を言うならば、宿舎のシャワー室の使用だって止めさせたいくらいなのだ。なんとかアルトを思い留まらせようと、ミハエルは営業時間について指摘する。 「正月三箇日は特別営業で、朝から夕方までなんだよ」 ピシリ、と指を三本立てて、アルトは嬉しそうに語る。ミハエルは、深いため息を吐き出した。その輝くばかりの笑顔を、自分の一言で曇らせるのも気が引ける。そう、こんな可愛らしく微笑む恋人に、どうしたら行くなと言えるだろうか。だから、ミハエルは考えた。 「俺も一緒に行く。それで、アルトのアパートで仮眠を取らせて貰う」 どう?と煌く蜂蜜を思わせる笑顔で訊かれて、アルトは声を詰まらせる。その笑顔は反則だ。アルトが、その蕩けるような甘い微笑に弱いことを知って、そんな表情で迫るのだ。思わず、アルトは視線を逸らした。だって、唇だけで呟く。隙あらば、過剰なスキンシップをしたがるミハエルなのだ。チラリとミハエルを盗み見る。 「布団。オレの分しかねぇんだけど」 「一緒に寝れば良いだろう?腕枕してやるよ」 いつもみたいに、とミハエルの腕がアルトの腰を抱き寄せる。 「ミシェルっ!」 パシン、とその手を叩いて、アルトはミハエルを睨み付けた。これだから、簡単に誘えないのだ。その柳眉を顰めるアルトに、ミハエルは苦笑を浮かべる。 「大丈夫、アルトが心配しているようなことはしないって。俺も疲れてるし」 期待するなら応えるけど?と耳元で囁くと、アルトは顔を真っ赤にしてミハエルの腕から強引に逃れた。 「誰が期待なんかするか、バカ!」 漆黒の尻尾を翻すアルトに、ミハエルは目を細める。本当に、アルトといると退屈しない。 「・・・・・・・本当に・・・何もしない・・・・な?」 耳の先を紅く染めて、アルトはミハエルを見ないで呟いた。その背中を抱き寄せて、ミハエルは優しく耳朶に囁く。 「しないよ・・・・・アルトの嫌がることは・・・・・」 「じゃぁ・・・・・・来れば良い」 素直じゃない恋人に、ミハエルは破顔した。 |