「あ〜、オレがガキの頃に着てたヤツならランカに合うかもしれないな。シェリルには、お袋のが丁度良いだろう」 ぱぁ、とランカの顔が輝いた。その様子に、アルトはホッと胸を撫で下ろしながらも、次の問題を解決すべく脳内のデータベースを必死に検索する。彼女たちに似合う着物や帯。草履などの小物類。更に、シェリルの凶悪なまでにグラマラスなボディを補正するタオルの在庫。チラリと時計に目をやると、アルトは腹を括った。日の出ている内に初詣でに向かうには、悩んでいる暇はない。 「じゃぁ、俺はお姫様たちの支度ができるまで、駅前のカフェにでも避難しておくかな」 最後の唐揚げを飲み込んで、ミハエルは立ち上がった。アルトの狭いアパートで、歌姫たちの準備が終わるまで待機できるようなスペースはない。ミハエルはちゃぶ台の上の皿を片付けると、壁に掛けられたコートを手に取った。アルトは慌てて箪笥の中から発掘した肌襦袢を、シェリルとランカに押し付けると踵を返す。 「取り敢えず、下着脱いでそれに着替えてくれ!」 「・・・・・え・・・・・下着って・・・・・・」 アルトの言葉に、ランカは戸惑った。ミハエルは、台所と居間を仕切る扉に手を掛けるアルトを押し留める。 「姫、下着ってパンツも?」 かぁ、とランカの顔が音を立てて赤く染まる。それを見て、初めてアルトは彼女の困惑した理由を悟った。さすが本格派、と口笛を吹きそうなミハエルを玄関まで押しやりながら、アルトも顔を真っ赤にして扉を閉じた。 「・・・・・・・・・・下は、穿いててくれ」 これから薄布だけを纏う彼女たちに着付けをしなければならないのに、何を意識しているのだろうか。扉越しに聞こえてくるシェリルとランカの話し声や衣擦れの音に、アルトは居心地悪そうに靴を履くミハエルの背後に立った。 「二人分だから、それなりに時間掛かると思う・・・・・」 アルトの声にミハエルは、うん?と振り返る。玄関口が薄暗いせいか、アルトの表情は分からない。それでも、その声音はどこか沈んで響く。ミハエルは小さく笑みを零すと、滑らかな頬に唇を寄せた。 「適当に時間潰してるから、俺のことは気にするなよ・・・・・そしたら・・・あ・・・・・いや、何でもない・・・・」 突然何か言いかけて、途中で押し黙ってしまったミハエルに、アルトは怪訝そうな顔を向ける。 「何だよ、途中で止められたら気になるだろう?」 「・・・・・ホント何でもないから、忘れてくれ・・・・・」 ポンポンとミハエルがアルトの肩を叩くと同時に、居間からシェリルの呼ぶ声が響く。 「じゃぁ、また後でな」 ぽん、と優しく頭を叩かれて、アルトは釈然としない表情のまま、ミハエルの背中を見送った。 |