「はい、完成〜」 腰に帯締めで般若面を括りつけると、なるほど鬼の化身のように見えてしまうから不思議だ。ボビーは、最後の点検とばかりに厳しい目つきでアルトを見る。腕を組んだその姿は、マクロスクォーターの操舵士には見えない。メイクアップアーティストその物だ。 「ちょっと、アルトちゃん!コレは頂けないわよ?」 クイクイ、とボビーの指が青い布を引っ張った。やはり、厳しいプロの目は誤魔化せなかったらしい。 「緋袴の隙間から覗く、白と黒のコントラストがメニアックなんじゃない!」 メニアック、とアルトはガックリと項垂れた。ボビーの指は、邪魔な下着だ、と抗議するように今にも破りそうな強さだ。 「・・・・・でも・・・・・」 腰の素肌を晒す羞恥はともかく、確かに見てくれが良くないことはアルトにも分かる。それでも、とアルトは拳を握った。ボビーの言葉を実現する為には下着をつけずにパレードに参加することになる。こんな短い袴で、うっかり風が吹いたりしたら・・・・・。想像するだけで目眩がする。俯くアルトに、ボビーは小さく笑みを零した。本当に、難儀な性格をしている物だ。叩き込まれた完璧主義故か、自らの意思よりも、いかに美しくあるかを優先してしまう。男の身でありながら、理想の女性として生きることを是とされた、歪な人形。 「悪い大人ねぇ・・・・」 自嘲するように呟きながら、ボビーはロッカーを漁った。そして、微笑みを零す。 「これ、アルトちゃんにあげるわ。大丈夫、未使用の新品だから」 ハイ、とアルトの手に握らせる。指の隙間から見える白いレースやシフォンに、アルトは縋るようにボビーを見た。だが、微笑みを湛えたまま、ボビーは無慈悲に告げる。 「集合時間まで、十分切ったわよ?さぁ、急ぎましょう!」
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集合時間ギリギリになって、漸くアルトはボビーの部屋から飛び出してきた。ギュっと袴の脇を握り締め、顔を真っ赤に染めて逃げるように歩くアルトに、ミハエルは慌てて声を掛ける。 「随分、時間掛かったな」 時間を掛けただけあってか、素より美しい上に化粧映えのするアルトだが、その姿はまるで誂えたようにしっくりと馴染み、輝いてさえ見える。ミハエルは、黒絹を一房に手を伸ばした。 「・・・・・綺麗だ・・・・」 |