角度を変えた質問に、アルトはいつものセリフを忘れて腕を組んだ。そうして、ミハエルからの問いに、寝ぼけた頭が少しずつ動き出す。今日は、ただの平日ではないのか。分からない、とアルトはミハエルを見上げた。そして、その頃にはすっかり目の覚めたアルトの琥珀色の瞳に映ったミハエルの姿に、アルトは驚愕を滲ませて叫んだ。 「っ・・・・ミシェル!お前、頭に何付けてるンだよっ?」 しっかりと隙なくセットされたミハエルの金色の髪に載せられた、ふわふわの三角形。蜂蜜を思わせる地毛よりも少し色の濃いそれは、動物の耳を思わせた。 「狼・・・・違うな・・・・狐?」 ただふざけているにしては、その質感はリアルだ。小さ過ぎることなく、まるで最初からミハエルの頭上にあったかのように、自然に付いている。 「正解。では、俺は何の為にこんな格好をしているでしょう?」 こんな格好、と言うミハエルの姿を、アルトは改めて見た。 「・・・・・狩衣?」 それは、歌舞伎が成立するより遥か昔から、公家の普段着に用いられた物に似ていた。色は、氷襲を思わせる純白。小袖と差袴は薄墨色で、腰帯は濃紺。それをミハエルらしくなく、着崩している。それでも、その純和風の古典的な格好にも関わらず、妙に様になっている姿に、アルトは視線を落とした。思わず格好良いと思ってしまう自分が、恨めしい。 「ふぅん、コレはそんな名前なんだ・・・・で、何で俺はその狩衣なんて物を着てるんだ?」 知らなかった、と呟きながら、ミハエルは答えを急かす。アルトは唸った。どんな理由があれば、狐耳を付けて狩衣を着るなどと、奇天烈な仮装をしようと思うのか。 「・・・・・仮装?」 ふと、アルトは呟いた。その言葉の響きに、何かが引っ掛かる。つい最近、聞いたような気がする。仮装、仮装、と呪文のように繰り返しながら、アルトは考える。それでも、あと一歩の所で答えが逃げてしまう。 「そう、仮装だよ。今日はハロウィンだしな」 眉根を寄せるアルトに、ミハエルはヒントを出した。アルトが自力で答えを導くことも大事だが、何しろ時間が迫っているのだ。特にアルトは、着替えが終わったらボビーの元に行くように指示が出ている。今日は彼も大忙しだろうし、あまり悠長にクイズをしている場合ではない。 「ハロウィンだから、仮装?」 ハロウィンを知らないわけではないが、あまり馴染みのあるイベントではないことは事実だ。それでもアルトだって、ハロウィンには仮装して家々を回り『 Trick or Treat 』と言って、お菓子を貰うイベントであることぐらいは知っている。しかし、だからと言って何もミハエルまでお祭りに乗じるのは如何なものだろうか。一応、法律上は成人している、いい大人なのだから。 「ガキじゃねぇんだから・・・・」 零れ落ちた苦言に、ミハエルは苦りきった表情で応じた。結局、アルトが自力で思い出すことはなさそうだ。ミハエルは、アルトのベッドに腰を下ろすと、しょうがないか、と呟いた。 |