部屋の外が騒々しい、とアルトは眉根を寄せながら寝返りを打った。まるで、浮き足立つような騒がしい足音達が、部屋の前を通り過ぎて行く。時間は、まだ早朝と言っても良い時間だ。にも関わらず、廊下を走る足音の数は、かなりの量だ。

一体、とアルトは枕に小さく呟きを落とした。今日は何だと言うのか。緊急招集が掛かっているなら、ミハエルが血相変えて起こしそうなものだが、どうもその気配もない。ならば、とアルトは布団を引っ張り上げた。この騒がしさは、自分には関係ないことなのだ。そう決め込んで、改めて眠りの世界の扉に手を掛けた時、シャっと鋭い音を立ててカーテンが開かれた。

「アルト!いつまで寝てるつもりだ?」

 うぅ、と瞼越しに瞳を焼く人工の白い光に、アルトは呻いた。逃げるように、モゾモゾと布団に潜る。まるで芋虫のように布団に包まるアルトに、ミハエルは手に腰を当てて溜息を吐き出した。

「姫は着慣れてるから時間掛からないんだろうけど、それでも集合時間に遅れたら、間違いなく隊長から大目玉食らうぞ」

 大目玉を食らう程度なら、可愛い物だろう。電源を切ったEXギアを着けて、格納庫五十周で済めば僥倖。今回の依頼に決して乗り気ではないオズマが、怒り任せに罰を考えるのかと思うと、他人事ながらアルトの行く末に同情を禁じえない。

「・・・・姫じゃない・・・・」

 ミハエルの言葉の意味がさっぱり分からないが、それでもアルトはお約束の言葉を吐き出した。

「せっかくの休みなんだぞ・・・・もう少し、寝かせろ・・・・」

 連日の訓練で、アルトの体は疲労困憊の底にいた。休息の取れるうちに、少しでも体力を回復しておかねば、徒にペナルティを増やすことになる。だからこそ、突然の休校は神様がくれたプレゼントとして、丁重に頂戴すべきなのだ。

「その、せっかくの休みは、何でだ?」

 唐突なミハエルの問いに、アルトは眠気に支配された頭のまま、う〜んと唸った。今日は、十月三十一日。何かの祝日でもなければ、カレンダー上では至って普通の平日である。そんな今日を突然、休みにする、と学園が言い出したのはいつだったか。胡乱だ頭で、記憶を辿る。そう言えば、月の頭だったような気がする。だが、その理由が思い出せない。詳細は、プリントを見るように、という教師の言葉を遠くに聞きながら、アルトは紙飛行機を作っていた。あ、とアルトは小さく声を出した。一瞥すらしなかったあのプリント。早々に手慰みに、紙飛行機にしてしまったプリント。アルトは、観念したように布団から這い出した。それでも、体の半分が未だ布団に埋もれている辺り、眠り姫と揶揄されてもしょうがない寝汚さである。

「・・・・・何で、だっけ?」

 さすがに覚えていないことに、多少の後ろめたさを感じるのか、アルトの表情は固い。余りに予想を裏切らない答えに、ミハエルは肩を竦めた。そう、アルトがプリントの内容も確認せずに紙飛行機を作っていた姿を、ミハエルは見ていたのだ。ミハエルは、肩を竦めた。

「じゃぁ、姫。今日は何の日?」

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