分かりきったアルトの答えに、ミハエルは微笑んだ。アルトがスイーツを選んだ意味なんて、一つしかない。それでも、アルトが顔を上げさせる為には、十分だった。ミハエルは保冷バッグからプラスチックのスプーンを取り出す。
「それで、姫は杏仁豆腐をと何を迷ったの?」
 ショーケースの前で必死に悩むアルトの姿を想像して、ミハエルは小さく吹き出した。ダメだ、可愛い過ぎる。
「別に、悩んでなんかねぇよ!」
 ミハエルに全て見透かされているようで、アルトは反射的に抗弁した。だが、ミハエルは意味ありげに目を細める。
「せっかく二人分買って来るんだったら、別々の種類でも良かったかもな」
「おぉ、その手があったか」
 ミハエルの指摘に、アルトはポンと手を打った。同時に、実は娘々で百面相していた事実が露呈する。
「あ・・・・・」
 気まずそうに真っ赤になって俯くアルトに、ミハエルはクスっと笑った。
「それで、姫は何と迷ったの?」
「・・・・・・・・・・マンゴープリン」
 娘々のマンゴープリンは果肉がたっぷり入っており、更に濃厚なことで有名だった。ミハエルなら、一口食べるだけでコップ一杯の烏龍茶を必要とするだろう。つまり、杏仁豆腐はアルトの最大限の気遣いなのだ。ミハエルは蜂蜜のような甘い笑みを浮かべると、少しだけ腰を浮かしてアルトの前髪をサラリと撫でた。
「退院したら食いに行こうな」
 食おうぜ、とスプーンをアルトに握らせると、ミハエルは問題集をテーブルの端に押しやった。その時、テーブルの上から白く細長い袋が落ちた。あっ、とミハエルが声を上げるより早く、袋の口から細長い銀色の髪飾りが零れ、澄んだ音を立てて床で小さく弾む。
「何か落ちたぞ」 
「触るなッ!」

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