「大丈夫、皆自分の世界でいっぱいだよ」 確かに、とアルトは小さく唸った。辺りを見回せば、額を突き合わせるように睦み合うカップル、楽しそうに会話を交わす女性の集団。そして、子供へのプレゼントだろうか、大きな包みを抱えた男性が足早に家路を急いでいる。ミハエルが指摘するように、皆周りのことなど何一つ気にしていない。だが、だからと言って外で腰を抱かれるなんて、羞恥の海に沈んでしまいそうだ。 真っ赤になって俯くアルトに、ミハエルは柔らかく微笑んだ。そのまま両手を広げて、まるで壊れ物でも扱うようにそっと腕に包み込む。普段は負けん気の強い横顔しか見せないのに、二人っきりになった瞬間コレである。本当、男のクセに男の性が理解できないお姫様だ。 「今日はクリスマスなんだし。特別だって」 いつもより少しだけ低いミハエルの声。耳朶に直接触れるそれが熱くて、アルトは唇を噛んだ。ミハエルはずるい。特別を孕む声で、クリスマスだから、なんて甘えるような響きは反則だ。まるで呪文のように、アルトの頑なな自制心を蕩けさせてしまう。 「っ・・・・・今日、だけだからなッ・・・・・・」 どんなに抵抗を試みても、アルトがミハエルに抗いきれるわけがないのだ。視線を彷徨わせて唇を尖らせるアルトに、ミハエルはこれ以上ないくらい蕩けそうな微笑を閃かせた。そして、アルトの唇に掠めるように口付けると、そのままグイと腰を引き寄せた。頬どころか耳の先まで赤くして、アルトは何か言おうと口をパクパクさせたが、上手く言葉が見つからなかったのだろう。そのまま観念したかのように、おずおずとミハエルの背中に腕を回すのだった。
それから、二人はしばらく無言のまま歩き続けた。時折アルトは空を見上げるが、雪の降る気配はない。あぁ、とミハエルはアルトの腰に回した手に力を込めた。雪が降らなくても、アルトは常に空を見上げ続けている。その、少し愁いを帯びたような横顔を美しいと感じるのも事実だ。それでも少しぐらい、否、今日ぐらい自分に向けてくれも罰は当たらないだろう、と子供染みた独占欲が首を擡げる。 「ミシェル?どうした?」 |