◆◆◆◆◆◆ 遠くに響く水音に、アルトは重たい瞼をゆっくりと開いた。優しい暖かな光に、一瞬記憶が混乱する。柔らかい毛布をギュッと抱き締めて、アルトはノロノロと起き上がった。ゆっくりと辺りを見回し、状況を整理する。ローテーブルの上で揺らめくキャンドル。その隣に、半分ほどシャンパンの入った細身のグラスが残されている。丸めた手でごしごしと目を擦ると、ようやく記憶が一繋ぎの絵となり蘇った。 「・・・クリスマス・・・・・」 口当たりのよいシャンパンに、思わず飲み過ぎたらしい。しかも、そのまま眠り込むという失態。ミハエルが用意してくれたつまみ達は片付けられ、飲みかけのグラスだけが取り残されている。アルトはグラスに手を伸ばすと、寝込んで乱れた髪を解いた。組紐をテーブルに落として、温くなったシャンパンを流し込む。 「・・・・・呆れたよなぁ・・・・」 舌に残る苦味に眉を潜めながら、アルトは落ちてくる髪もそのままに頭を抱えた。サラサラと手の上を滑る黒髪。ミハエルが隣にいると、どうしても制御ができなくなってしまう。みっともない姿を晒したくなくて、なるべく酒の席では控えるようにしているのだが、ミハエルがいるとタガが外れてしまうのか、勧められるまま体が欲するままに求めてしまう。アルトは深く息を吐き出しながら、髪を掻き上げた。 「片付け・・・・・」 準備してくれたのだから片付けは、と思っていたのに、綺麗に磨き上げられたテーブルの輝きにアルトは更に自己嫌悪に陥った。常に対等でいたい。だからこそ、こんな借りを作るような事態だけは避けたかったのに。 「・・・・サイアクだぁ・・・・」 両手で顔を覆いながら、アルトは呟いた。だが、ブラックホールよりも深い反省の念に捕まる寸前、指の透き間から見えた世界にアルトは弾けるように顔を上げた。 窓の外、ハラハラと音もなく舞い落ちる白く淡い花弁。 |