シュワシュワとした刺激と同時に、口の中一杯に甘くフルーティーな葡萄の香りが広がる。苦味よりも爽やかな風味に、アルトはそのままグラスを煽った。喉が乾いていたのか、一気に飲み干してしまった。

「良い飲みっぷりだな」

 破顔してミハエルは、すかさずアルトの細身のグラスに金色のシャンパンを注ぐ。パチパチと小さな飛沫がグラスの口元で弾け、その香りに誘われるように、アルトは再びグラスに唇を寄せた。グラスを傾け、そのまま半分ほど飲んでしまう。

「珍しいな」

 ほう、とため息を漏らすアルトに、ミハエルは目を細めた。自らも一口、唇をシャンパンで濡らす。

「コレ、美味い」

 酒はあまり得意でない、と言うが、それは味覚が若干お子様だからじゃないか、とミハエルは思う。ビールは好きじゃない、と聞くから、恐らく苦味が得意ではないのだろう。その証拠に、果実酒などには割りと積極的に手を伸ばす。

「もっと飲むか?」

 ボトルを持ってグラスに近づければ、アルトはうっすらと染めた頬で頷いた。まったく、とボトルを傾けながらミハエルは肩を竦める。そんな表情をされたら、ミハエルの脆い理性が音を立ててしまう。いつも、と言えば語弊があるが、男は皆狼なのだ。こちらにも色々都合があるのだから、不用意に煽るような真似はやめて欲しい。だが、アルトは至って無意識なのだ。本当に、性質が悪い。ミハエルの葛藤など知る由もなく、アルトはグラスを傾ける。甘い香りが口腔で弾け、爽快な冷たさが体の所々に残っていたライブの熱気を押し流した。指先までシャンパンに満たされる。

「つまみも食えよ」

 そう言って、ミハエルは大皿に盛り付けたつまみを取り分ける。アルトにフォークを握らせて、自らはゆっくりとグラスを傾ける。喉の渇きを潤すそれは、同時に紡ぐべき言葉を押し流してしまいそうだ。それでも、妙な緊張感に唇が乾く。

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