控え室のロッカーからコートを取り出しながら、ミハエルは深いため息を吐き出した。 「今回こそは、控え室を確保できて良かったよなぁ」 「そうですね」 振り返って、ルカはニッコリと天使の微笑を浮べて見せた。 「今日みたいな日に、控え室ナシとか言われたら死んじゃいますよね」 シェリルの鶴の一声で開催が決定した、クリスマスライブ。題して『サンタ以外がプレゼントしちゃいけないって誰が決めたのよ?シェリルとランカのプレゼント大作戦』のアクロバット飛行に借り出されたアルト達は、問答無用にクリスマスイブとクリスマス当日のスケジュールを押さえられてしまったのだ。 去年までは分刻みのスケジュールで、女性たちとの甘い一時をこなしていたミハエルだが、今年こそは心の底から惚れぬいた恋人と過ごせると、ガラにもなく少々浮かれていた。ミハエルらしくもなく、色々と計画を練っていたりしたのだ。それが、突然振って沸いた強制労働に潰された落胆振りたるや、ルカでさえ目を疑ったくらいだ。だが、恋人である当のアルトは、屋内という条件付ながら『飛べる』という、まさにクリスマスプレゼントのような事態に素直に喜ぶという始末。まぁ、とミハエルは肩を竦める。正直な話、アルトが自分とクリスマスを過ごすことに執着があるとは、到底思えないのも事実。飛べる、と表情を輝かせるアルトも可愛いので、由としようと思う自分に、かなり末期だと思い知る。それでも、とミハエルは笑う。アルトに熱を上げている自分は嫌いじゃない。 「今年は降るかなぁ?」 真っ白のもこもこダウンジャケットに腕を通して、アルトは見えない空を見上げるように天井を見た。 |