昨日ミハエルに誘われてから、ルカはずっとナナセへのお返しを考えていたのだ。重たくならず、且つ印象に残る物。そして、何よりナナセが貰って嬉しいと心の底から思ってくれる物を。

「きっと喜んで貰えるぞ」

 先程までとガラリと違う優しいミハエルの声と表情に、ルカはヘヘヘと頬を掻いた。本当に先輩たちの言うとおりだと嬉しい。

「あの僕、これで失礼しますね」

 三人で遊ぶのは楽しいけれど、ルカには色々と用事があった。L . A . Iの開発主任として忙しい日々を送る生活も嫌いではないが、こうして年相応の少年らしい時間がずっと続けば良いとも思う。

「仕事か?」

 アルトの問いに、ルカはコクンと頷いた。せめてお茶くらいできれば良いのだが、生憎デスクに積みあがった実験データたちは、それさえ許してくれないだろう。ルカは、下げていた紙袋を大事に胸に抱えた。

「じゃぁ、済みません。お先失礼します」

 パタパタと駆けて行くルカの後姿を見送って、アルトは長い髪を靡かせて振り返った。

「オレたちも帰るか?」

 両手に下げた紙袋を、今すぐにでも車道に放り投げてしまいたい衝動に駆られながら、アルトは努めて冷静にミハエルに話し掛ける。

「どうせ姫はこの後に予定なんてないんだろう?もうちょっと付き合えよ」

 甘い蜂蜜が滴るような笑みを浮かべて、ミハエルは強引にアルトの手を引っ張った。バランスを崩しそうになるアルトを胸に引き寄せて、その耳朶に唇を寄せる。

「さっきから気にしてるんだろう?オレにバレンタインデーのお返しはないのかな?って」

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