車を降りると、想像以上の寒さにアルトはブルリと体を震わせた。晴れて自分の物となったマフラーをきっちりと巻いて、アルトは後部座席から荷物を引っ張り出すミハエルの傍らに立った。

「コレがお返し第一弾って、第二弾があるのかよ?」

 よっぽど気に入ったのか、マフラーに深々と顔を埋めたアルトの姿に、ミハエルは柔らかい笑みを零す。途中のコンビニで買った食料を手を伸ばすアルトに持たして、ミハエルはスポーツバッグを肩に背負った。

「言っただろう?俺の取って置きの場所があるってさ。そっちが本命」

 キザにウインクを飛ばす仕草さえ、悔しいくらいに様になる。歩き出したミハエルの背中に小さく悪態をついて、アルトはミハエルの後を追った。

 全てが人工物のフロンティアに、こんな場所があるのかと、アルトは鬱蒼とした木立をキョロキョロと見回した。木々の透き間から漏れる光りは頼りなく、獣道のような道を歩くには些か心もとない。

「アルト、ほら」

 ミハエルの手が、アルトの手を掴んだ。指に触れたミハエルの手から、マフラーと同じ手触りがする。薄い明かりに目を凝らして、アルトは小さく声を漏らした。いつの間にか、ミハエルの手は黄色みを帯びた暗緑色の手袋に包まれていた。しかも、よく見ればマフラーと手袋のデザインはそっくりだ。もしかして、とアルトは息を呑んだ。これは、秘かに『お揃い』と言えるのではないだろうか。アルトの顔が見る間に赤く染まっていく。常に二歩三歩先を行くのが狙撃手だ、と嘯くミハエルだ。気付いてない、なんてあるのだろうか。チラリとミハエルを盗み見れば、尖った耳の先がほんのりと色付いているような気がする。

「もう少しだ」

 アルトの視線を催促と受け取ったのか、ミハエルは振り向いて笑い掛ける。そして、繋いだ手にギュッと力を込めて、アルトを引き寄せた。

「きっと、姫も気に入ってくれると思うんだ」

 少し照れたような声音でミハエルが囁くと同時に、一気に視界が開けた。

「すっ・・・・・・・げぇ・・・・・・・」

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