「アルト、そのマフラー気に入ったのか?」

「肌触りが良いな」

 カシミヤだろうか。柔らかくふんわりとした感触に、アルトはうっとりと目を細める。心地良さそうな表情を見せるアルトに、ミハエルは小さく笑みを零した。

「そんなにお気に召したとあれば、そちらは姫に差し上げましょう」

 芝居がかったミハエルの言葉に、アルトは一瞬理解できなかった。目を丸くするアルトに、ミハエルは頷いて見せる。

「ちょ・・・・・高かったんだろ?」

 肌触りの良さだけで、このマフラーが如何に上質の物であるか分かる。それを、簡単に譲る考えが理解できない。貰えない、と首を振るアルトに、ミハエルは困ったように肩を竦めた。

「じゃぁ、バレンタインのお返し第一弾、ということで・・・・・」

 ミハエルは車を止ると、まっすぐアルトを見つめた。

「貰ってくれるよな?」

 エメラルドグリーンの瞳は、眼鏡越しでもその眼差しが弱まることはなかった。熱っぽい視線に抱きすくめられて、アルトは頬を染めて視線をずらした。

「ホント、お前ってズルイ・・・・・」

 暗闇でも分かるほど真っ赤になったアルトは、マフラーに顔を埋めてコクンと頷いた。

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