ミハエルはヘルメットを脱ぐと、乱れた髪を整えるように前髪を掻き上げた。哨戒任務を終えて、ようやくホッと息を吐く。タラップを降りると、先に着艦していたアルトが待っていた。

「お疲れ。何事もなくて良かったよ」

 長い黒髪を揺らして微笑する恋人に、ミハエルも笑顔で答える。

「バジュラも空気を読んだんだろう。何しろ、今日は大晦日だし」

 正確には、世間様は既に正月を迎えているのだが、大晦日の遅番勤務の彼らの気分はまだ年末の喧噪が残っていて、とても年が明けたような実感がないのだ。きっと、一眠りすれば問題なく年明けを感じられるだろう。

「しかし、クリスマスのシフトに入れば正月休みをくれるって話信じて了解したのに、まさか大晦日の遅番まで入れられるとは思わなかったなぁ」

 最早詐欺レベルだ、とミハエルは大きくため息を吐いた。これが早番だったら、もう少し印象は違ったかもしれない。

「人手が足りなきゃ、文句言えないだろう」

 何しろ、アルトとミハエルは都合の付き易い独り身の学生なのだ。白羽の矢を向けられるのは、当然のこと。

「姫が、了解、とか言うから・・・・・」

 アルトと過ごすクリスマスについて、ミハエルは色々と計画を練っていたのだ。それを、シフトの話を持ちかけられたアルトが、二つ返事でクリスマスに仕事を入れてしまったのだ。

「オレは、むしろ正月休みを貰える方が有り難いと思っただけで・・・・・」

 正直、クリスマスに馴染みはない。ましてや、恋人同士で過ごすなんて、恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだ。だから、アルトは渡りに船とばかりに、クリスマスの出勤に飛びついたのだ。

「それで、ミシェルどうする?一眠りしてから来るか?」

 冬休み前と同じ流れになり掛けて、アルトは慌てて話題を変えた。また同じことで揉めるのは、御免である。しかも、年明け早々喧嘩とか、あまりに幸先が悪過ぎる。

「・・・・どうするって?」

 首を傾げるミハエルに、アルトは一瞬言葉を詰まらせた。クリスマスのゴタゴタで、忘れてしまったのだろうか。

「おせち料理食いたいって言ったの、ミシェルだろう?」

 クリスマスの宣伝と併せて、十二月に入ると同時に始まったおせち料理のCMを見たミハエルが、興味津々に指をさして言ったのだ。もちろんアルトとしては、自分の文化に積極的に興味を持って貰えるのは素直に嬉しいし、その為の手間なら惜しむ理由もない。それに、勝手にクリスマスに仕事を入れてしまった罪滅ぼしも兼ねて、アルトは仕事と宿題の合間を縫うようにして、コツコツとおせちを作っていたのだ。

「あぁ、確かに言ったけど・・・・・・アルト、作ってくれたの?」

 そう言えば、クリスマスの過ごし方について喧嘩した後、アルトはしょっちゅうアパートに戻っていたことを思い出す。自分と顔を合わせたくないからだろう、と思っていたのだが、こんなサプライズがあったなんて、想像もしていなかった。

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