虫も殺さぬ顔をして、可愛いさを振り撒いて近づけば、女性たちは油断するかもしれない。そう、案外ルカは強かなのだ。そうでなければ、大人たち相手にLAIの技術顧問などできる訳がない。 「先輩たちもお似合いですよ〜」 「本当・・・・・想像以上の嵌まりっぷりで・・・・・」 ルカを押しのけるように顔を覗かせたのは、アルトたちの衣装のプロデューサーであるミーナだった。そのいつもと纏う空気が違って見えるのは、魔女の仮装をしているせいだけだろうか。 「ぜひ、写真を撮らせて!」 携帯のカメラを向けるミーナに、アルトはよろけるように一歩下がった。その背中に、トンと何かがぶつかる。同時に、雷が響き渡った。 「いつまではしゃいでる!第一便の奴らは、もう現地に着いたぞっ!」 額に大きな傷に、こめかみから生えた大きな釘。顔をドーランで薄く青で塗ってはいるが、誰が間違えよう。フランケンシュタインのオズマである。 「っ・・・・隊長・・・・・」 呆然と呟きを落とすアルトの唇の色に、オズマは複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに払拭すると、何事もなかったかのように口を開いた。 「いつまでも騒いでないで、とっとと席に座れ!」 まるで引率の教師のようだ、とミハエルは口の中で呟いた。それに、と小さく肩を竦める。早く座れ、とオズマはせかすが、いかんせん大輪の花のように揺れる金色の尻尾が邪魔で、どうバスの狭い席に収まれというのか。 「ミシェルちゃん一人で、後ろの席を占領しちゃえば良いのよ」 ほらほら、とトンガリ帽子を被ったボビーがミハエルの背中を押した。確かに、かさばる尻尾があっては、二人掛けの椅子に腰掛けるのは難しい。それでも、アルトの隣を誰かに譲るのは頂けない。 「いや、そんな訳には・・・・・」 下っ端なのだから遠慮する、と尤もらしい言葉を口にしてみる。だが、そんな浅はかな思惑も、オズマがあっさりと粉砕した。 「何の為に人数に対して、多めにバスを手配したと思ってる?」 ミハエル程ではないにしろ、皆それぞれ場所を取る仮装になるだろうことは、簡単に予想ができた。慣れない格好で、狭いバスにギュウギュウ詰めにしようものなら、出発するまでに膨大な時間を要するだろう。そこで、制限人数よりも少ない乗車人数にすれば混乱も少なかろう、と複数台のバスを用意したのだ。 「分かったら、席に着け!」 オズマにまで背中を押されて、ミハエルはアルトを見た。 「アルト先輩。良かったら僕の隣に座りませんか?」 |