「ミシェル・・・・?」 ギシリと撓る音に、アルトは振り返った。バサリと翻る黒髪から、白い雪の欠片と雫が煌いて弾ける。 「こんな寒い中、そんな薄着じゃ風邪引くぜ?」 目を細めて、ミハエルは冷え切ったアルトの体を引き寄せた。腕で抱きしめるように、毛布に包み込む。 「ほら、髪も濡れてる」 チュッと唇を押し当てれば、腕の中でアルトが体を硬くするのが分かる。初な反応に、ミハエルは思わず表情を緩めた。本当に、言葉では言い尽くせないくらい可愛い。だからこそ、とミハエルは心に誓う。 「すぐに風呂に入るから問題ねぇよ」 体はミハエルの体温に解けそうだ。それでも、あからさまな強がりを口にしながら、アルトの瞳は降り積もる雪を見詰めている。 「雪って・・・・綺麗だな」 ハラハラと世界を白く塗り潰す。きっと、明日の朝は白銀色に輝く街が見られるだろう。そう、ちょっとした切っ掛けで世界は簡単に一変する。 ミハエルは、ギュッとアルトを抱き締めた。 「ちょ・・・・・ミシェル・・・・・?」 苦しい、と不満を口にするより早く、アルトの耳朶にミハエルの吐息が触れた。 「なぁ、アルト。来年も再来年も、ずっと・・・・・ずっとこうして二人で雪を見ないか・・・・?」 背中越しに感じるミハエルの鼓動。そして、いつもよりも少しだけ緊張を孕んだ低い声。回された腕さえ、少し震えているように見える。 「・・・・・ミシェル・・・・・それって・・・・・」 ミハエルの言葉の意味が知りたくて、アルトは首を捻った。しかし、アルトの髪に表情を埋めたミハエルの真意は分からない。それでも、いつもは染まることのない尖った耳の先が少し赤い。果たして、それは寒さのせいだろうか。 「姫、返事が欲しいな?」 ミハエルは呆然としているアルトの左手を取ると、その薬指にそっと口付けた。 その言葉より雄弁な仕草に、アルトの視界が潤む。心臓が破裂しそうなくらいドキドキしていて、言葉を紡ぐなんて不可能だ。アルトはミハエルの胸に顔を埋めると、広い背中に爪を立てて強く頷いた。
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