「・・・・ミ・・・・シェル・・・・」

「あぁ悪い。起こしたか」

 サラリ、とミハエルの指が髪を梳る。慣れた心地よさに目を細めるアルトに、ミハエルは僅かに視線を彷徨わせた。数日アルトに触れられなかっただけだと言うのに、信じられないくらい心臓が脈打っている。

「・・・・夢?」

 寝ぼけているのか、アルトの声はどこか甘く子供っぽく響く。ミハエルは眦を緩めた。

「夢なんかじゃないよ。アルトの誕生日にさ、どうしてもおめでとうが言いたくてさ。超特急で仕事片付けてきた」

 それでも大遅刻になったけど、とはにかむミハエルに、アルトは首を振る。

「・・・あぁそうだ。プレゼントもあるんだ。ちょっと待ってて、ロッカーの中に・・・」

 子供だましの飛行機のモービルなのだが、きっとアルトは気に入ってくれる。そんなミハエルの言葉は、柔らかく微笑んで静かに首を振るアルトに、簡単に掻き消されてしまう。アルトはニッコリと笑うと、ミハエルの肩口に自ら額を擦り寄せた。

「ミシェルがこうしていてくれて、おめでとうって言ってくれる。それだけでオレは満たされる」

 ふわり、と花が綻ぶような笑顔に、ミハエルは息を飲んだ。寝ぼけているのだろう。アルトは驚く程素直だ。ミハエルは強くアルトを抱き締めると、そのままアルトの背中を布団に押し付けた。本当に、いつになったらこのお姫様は男心を理解するようになるのだろうか。

「アルト、誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、そして俺と出会ってくれて、本当にありがとう」

 それは、嘘偽らざるミハエルの心。その溢れる想いを唇に乗せて、ミハエルは柔らかなアルトの唇に口付けた。

 

Fin

 

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