簡易机にペッタリと伏せて、アルトは呟いた。 「・・・そう言えばオレ、今日誕生日だったんだよな・・・」 昼休みにランカたちから、アルト君お誕生日おめでおう!と声を掛けられ、ようやく思い出したのだ。そして先程シャワーから戻ってくると、シェリルからも中々高圧的なバースデーメールが届いており、アルトはいよいよ意識させられた。色々な人から誕生日を祝って貰えるのは嬉しいし、大変有り難いことである。けれど、とアルトは深い息を吐き出した。真っ先に誕生日を祝って欲しい人物からは、まだ何も連絡がないのだ。 「・・・・いや、分かってるけど・・・・」 ミハエルは、二日前から出張に出ているのだ。アルトは指を折った。帰ってくるのは、明日の夜。 ミハエル程のマメな男が、恋人の誕生日に出張中とは言え、バースデーメールの一つも寄越さないなど、有るだろうか。いや、とアルトは力無く首を振った。場所によっては、携帯が使えぬこともあるだろう。圏外の可能性もある。だからと言って、自分の誕生日を祝うために、会社の軍用回線を私的に利用するなんて、考えるだけでも頭痛がしてくる。アルトは立ち上がった。 「寝よう」 ミハエルからメールがこないぐらいで、何だと言うのか。ミハエルから出張の話を聞いた時、密かに両手を上げたのは、他でもない自分なのだ。毎晩迫ってくるミハエルを、数日とは言え相手にしなくて良いという解放感に喜んだのは、アルト自身。それを今更、とアルトは空のベッドを見た。部屋に一人きりなんて、SMSに入隊する前の頃は、当たり前だった。そう今になって感傷を覚えるなど、何かの間違いなのだ。アルトは自らに言い聞かせるように、ベッドに潜り込んだ。 電気を消した暗い部屋の中、アルトはもう何度目かの寝返りを打った。オズマに散々扱かれた体は、悲鳴を上るほど疲れ果てている筈なのに、ちっとも眠気が訪れないのだ。 「・・・・はぁ・・・・」 闇に慣れた目に、上段のベッドの底が見える。ミハエルのいないベッド。そこにある筈の気配が感じられない、と言うだけで、どうしてこんなにも落ち着かないのだろう。ヘッドボードに放り投げた携帯を引き寄せて、アルトは時間を確認する。時計は遅々として進まず、誰からの連絡もない。アルトは、最早数えることをやめた溜息を吐き出した。このまま、まんじりと夜が明けるのを待つのか。アルトはゴソゴソと起き上がると、枕を手にベッドから這い出した。
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