「悪い、起こしたか?」

「ん・・・・ウトウトしてただけだから・・・・・・」

 心配そうに覗き込むエメラルドグリーンの瞳に、アルトは柔らかい笑みで応える。寝起きのアルトは、驚くほど素直で無防備だ。その警戒心のない微笑みは、ミハエルの心臓を鷲掴む。本当に、アルトは男の性を何一つ分かってない。朝からそんな笑顔を見せられたら、脆い理性などあっと言う間に粉塵に帰してしまうのだ。それでも、ミハエルはどうにか踏み留まった。暴走しそうな本能を押さえ込んで、どうにか爽やかな笑顔を作ることに成功した。

「おはよう、アルト」

 蜂蜜色の優しく甘い笑顔に、アルトは思わず息を飲んだ。鼻先に触れるミハエルの吐息と声音、それにアルトの体を包み込む温もり。アルトはフルフルと首を振ると、真剣な眼差しをミハエルに向けた。

「ミシェル、違う・・・・」

 そう、今日は特別な日なのだ。

「あけましておめでとうございます」

 アルトの言葉に、ミハエルは一瞬目を丸くしたが、すぐに柔らかい表情で答える。

「おめでとう」

今にも蕩けてしまいそうな甘いミハエルの微笑みに、アルトは頬と言わず耳の先まで真っ赤に染めると、グイグイとミハエルの肩口に顔を埋めた。

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